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Greeting

ごあいさつ

私は、6年間の不妊治療を経て、現在は子どものいない人生を生きています。自らの経験から、子どもをあきらめたあとに人生を再構築し、希望を持って生きることが容易ではないことを知りました。そして現在、当事者の方々のお話を伺うなかで、望んだ家族のカタチをあきらめて前向きに生きるには、夫婦の関係性と、家族や社会からの理解が重要だと考えるようになりました。

 

2014年に一般社団法人MoLive(モリーブ)を立ち上げましたが、その法人の活動である当事者の方々のカウンセリングや、わかち合いの会を通して、いかに不妊治療と仕事の両立で悩まれている方が多いかを目の当たりにしてきました。不妊治療のためにどこか肩身の狭い思いをしなければならない、また仕事を辞めざるを得ない、そんな生きにくさを感じている方が多くいらっしゃいます。

 

不妊治療をしていることが言えず、「たるんでる」「仕事に集中していない」と叱責を受け、上司や周囲との信頼関係を崩してしまうケースもあります。“言えない”ことから、思いがけない不協和音が生じ、これまで築いてきたものが簡単に崩れてしまうとすれば、それは大変残念な状況ではないでしょうか。

 

新しい命を望み努力することは本来尊いことであり、人に後ろ指をさされたり批難されるようなことではないはずです。そして、子どもの有無が人間性をきめる要素になるわけでもありません。

 

「男女平等参画」が謳われてかなりの年月が経ちます。現代社会を男女が共に生きる上で、平等に参画すべき部分が多くなってきていることは間違いないことですが、どんな社会になろうと、時代が変わろうと、変わらない男女の役割があるのも否めません。それは「妊娠・出産」です。この地球上のどんな人でも、女性からしか生まれてきていません。男女は平等ではない部分があって当たり前で、その違いを補い合う体制づくりが必要ではないでしょうか。

 

職場においては、大事に育成し期待している従業員が不妊治療によって勤務状況が不安定になる状況は、「本当のところ困る」というご意見があるのも当然なことでしょう。ですが、従業員ひとりひとりのライフキャリアを大事に考える環境づくりも大きな課題ではないでしょうか。

 

まず、この問題について経営者、マネジメント、一般社員の区別なく多くの方々に知っていただき、考える視点をお持ちいただけたらと思います。働きやすい環境整備は、社会的要請であり、企業の質を内外に示すチャンスでもあります(現在働いている人にも、これから入社を目指す人にも)。「働き方改革」「女性活躍推進」という言葉が独り歩きすることのないよう、現状を知っていただくための啓蒙に努めて参る所存です。

​永森 咲希

リプロダクティブ・ヘルス/ライツとは:

1994年 カイロの国連会議(国際人口・開発会議)にて国際的承認を得た考え方

すべてのカップルと個人が、自分たちの子どもの数、出産間隔、出産する時期を自由に決定でき、そのための情報と手段を得ることができるという基本的権利 (国連合意に基づいた人権の一つ)

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