今年も昨年に続き、日本生殖心理学会の「生殖心理カウンセラー」と「生殖医療相談士」の養成講座の講師を務めさせていただきました。まだまだコロナ禍ということもあり、昨年同様、webでのオンデマンド講義用の準備。講義中の皆さまの反応を見ながら進めていくことができない分、リアルでお話するケースと異なる緊張感があります。
この日本生殖心理学会の養成講座は、「生殖心理カウンセラー」と「生殖医療相談士」の他に「がん・生殖医療専門心理士」の講座もあり、「生殖心理カウンセラー」が今年2022年で16期、「生殖医療相談士」が15期、「がん・生殖医療専門心理士」が6期と、早い段階から生殖心理を学ぶ重要性と必要性に着目され、専門性の高い養成時間を刻まれています。
30名近くの講師陣に、カリキュラム内容も、生殖医学、生殖心理、心理援助論、EBP、法律&倫理、多様な生き方、関連領域のこと等々、多岐に亘ります。私が務めさせていただいたのは、「多様な生き方」の領域の講義で、テーマは『不妊治療の終結とその後にかかわる心理支援』でした。
不妊治療において、「不妊治療を終わりにすること」には大きな難しさがあり、その心理も複雑です。希望と目標と願いを失うわけで、そこからの人生の立て直しは容易ではありません。想像もしていなかったその喪失は、その方のその後の生き方を左右します。その難しさについて、身をもって経験してきた私がお話しする機会をいただけること、いつも大変有難く思っています。
数年前に、オンデマンドではなく、会場で講義をさせていただいた時に、数名の受講生の方々から質問を受けた時のことを思い出しました。
「こういう声がけは当事者の方にとってどうなんでしょう?」
「患者さんの判定日、うちの病院ではこういう診察フローなのですが、今日の講義を伺って改善すべきところがあるなと感じました。私はこう思うのですが、、、」
「これまでの自分の対応を見直すことができました。今までの私はこうだったのですが、これからこうしていきたいと思います。それで間違っていませんか」
「院内で患者さんのための企画として、こういうものを提案してみようと思います。どうでしょう」
などなど。
既に当事者と関わりのある方はその対応を真摯に見つめ直し、これから当事者と接する立場の方々は、関わり方次第では当事者のその後の人生に影響を及ぼす重要な役割であることを意識されていらっしゃる気がして、胸が熱くなったのを思い出します。
なかには、「患者さんを看護していますが、実は私も当事者なんです」と、ご自身の複雑な胸のうちをおしえてくださった方もいらっしゃいました。私の講義を聴いて、ご自身のスタンスと考え方が決まったと感謝の気持ちを伝えにきてくださいましたが、そう受け止めていただけた私こそ救われた気持ちになり、その温かい言葉が今の私の活動を後押ししてくれています。
当事者のために、養成講座を主催する皆さま方にも、講座を受講し学びを深めてくださる方々にも、講師陣の方々にも、心から感謝を申し上げます。
ありがとうございます。
No rain, no rainbows for all.
オフィス永森
一般社団法人MoLive(モリーブ)
代表 永森咲希
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