広島の医療法人 絹谷産婦人科訪問の2日目、5月21日は、患者さんに向けての「患者セミナー」にて講演させていただきました。
KWC絹谷産婦人科(以下KWC)では、患者さん全員に、早い段階で患者セミナーへの参加をお勧めしています。その種類は2種類。ひとつは「妊活&心理教育セミナー」で、もうひとつは「治療終結セミナー」です。
診療時間内では患者さんに伝えきれないKWCの方針や診療のスタンス、また妊娠に向けての知識、患者さんに望むこと等について、絹谷院長先生を筆頭に、各部門から患者さんに向けてガイダンスを行うというものです。
「妊娠を望む方すべてが妊娠できればいいが、そうではない現実がある」 「望んで頑張ってきたことをそんなに簡単に終わりにできるものではない」 「心が揺れて当然。そんな心の揺れや悲しみも支援したい」
そう仰るKWCの絹谷院長先生。
特に「治療終結セミナー」を大事に考え、丁寧に準備されている様子から、妊娠が無理だった場合でも、患者さんにはそこから先の人生をより良く生きてもらいたいという院長の願いが伝わってきました。
ゲストの私はこの日、「The Epilogue for New Start(新しい日々のための最終章)」という演題でお話しさせていただきました。
事前にこんなに素敵なちらしまで作成いただき、患者さんの目の届きやすい院内に設置くださっていて感激。
絹谷院長先生からのご挨拶の後、各部門(医師部門/培養部門/看護部門)からの説明があり、 続いて私、永森咲希の講演でした。
私の話は、いつか妊娠するかもしれない可能性が誰にでもあるように、いつかあきらめざるを得ない可能性も誰にでもあることを前提に、子どもをあきらめるまでの私の体験や、終わりをどんな風に捉えたらいいか、また夫婦ふたりだけで生きる今思うこと等についてお話しさせていただきました。
治療の初期の段階で「終わりにすること」を考えることには、抵抗感を感じられたり、不快に思われる方もいらっしゃると思います。希望をもって治療に臨むところ、士気をそがれるようで辛いと感じられる方もおられるでしょう。
けれど、高齢で妊娠を望む方が増えている昨今、治療してもなかなか妊娠できない方が増えているのも事実です。
やみくもになってしまいがちな不妊治療。どんな結果が待っていたとしても、ご自身の人生を大事に豊かに生きていただきたいという願いを込めてお話しさせていただきました。
患者さんにとっては辛い話。みなさんの耳に届くかどうか心配でしたが、終了後のアンケートを拝見すると、
● 永森さんのお話、とても勇気づけられました。私たちの終結の時も、しっかり話し合って現実に向き合えるよう、今は、「今できること」を頑張ろうとも思います。
● やめどきはその人その人であると思いますが、永森さんのお話を聞いて前向きに治療に取り組みたいと思いました。セミナーに参加すること自体、心が重かったのですが、永森さんのお話を聞けてよかったです。ありがとうございました。
● 不妊治療を経験して、子供を授からなかった方の話を初めて聞きました。みんな同じ思いで生活をしているのだと改めて知ることができ、よい機会になりました。
といった感想を多くいただきました。
有難いです。
そして私が驚いたこと。 KWCスタッフと患者さんの、垣根がない関係性でした。
セミナーに来られる患者さんたちの名前と状態をスタッフ(ナース)が把握され、「あの後どうした?」とか「ご主人のお仕事落ち着いたの?」等と、いらした方々とフランクにお話をされ、自然に会場が和やかなムードに。
またセミナー終了後も、涙している患者さんの背中にスタッフがそっと手をあてながら思いを聴いて差し上げていたりと、ファミリーライクな場面にいくつも出逢いました。私自身も、病院という感じがせず、何かのコミュニティーの場であるような錯覚に陥ったほどでした。
KWCの「患者セミナー」は、患者さんの思いを大事にされるスタッフが知恵を出し合って企画するもの。その思いに満ちたセミナーでした。
貴重な場に参加させていただき、ありがとうございました。
永森咲希
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