静岡県主催【未来志向の経営戦略 多様な働き方導入セミナー】登壇
- 永森 咲希
- 2024年2月2日
- 読了時間: 5分
静岡県主催の「未来志向の経営戦略 多様な働き方導入セミナー」が3回に亘って実施され、その3回目に登壇させていただきました。
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◆ 2024年1月19日(金)13:30-16:20 第3回
第1部 基調講演
日本の不妊事情:仕事と不妊治療の両立可能な環境づくり
~ 家庭の事情と仕事の両立 ~
講 師:永森 咲希 一般社団法人ライフキャリア妊活サポート・モリーブ代表
第2部 先進企業の事例紹介
ヤマハ発動機株式会社 三島信用金庫 株式会社NISHI SATO
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働く意欲のある誰もがいきいきと働くことができるよう、企業側での働き方の見直しや柔軟な職場環境づくりが求められている今、このセミナーの目的は、専門家と先進企業の事例から学び、未来を考える企業に対して、多様な働き方導入の重要性とその実現のヒントを伝えることで、第1回目と2回目は下記のとおり実施されました。

(「未来志向の経営戦略 多様な働き方導入セミナー」のちらし)
今回は企業における事例紹介の時間もあり、三社の方々より、両立を支える取り組み体制についてお聴かせいただけ、現状を知るよい学びになりました。
子育て支援、疾病サポート、介護支援についてはしっかりした制度があるものの、仕事と不妊治療の両立支援に関しては、どんな風に支えたらいいのか手探りの中、試行錯誤されておられる様子も垣間見られました。
質疑応答で、印象に残ってるやりとりを一部のみですが、ご紹介します。
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1.不妊治療に関しては、組織内でオープンに話せる社員ばかりではないと思います。どんな風に制度や支援プランを立てたらいいでしょう。
永森:「個人の諸事情については会社に報告しなくてよい」という企業もあり、基本的な考え方はそれぞれですが、それが組織風土と直結するともいえます。話すことによるメリット・デメリットがありますが、オープンにしたくない人にはその理由があります。「元々信頼関係のない上司なので、個人的なことを話したくない」「子どもができない=人として劣っている、そう思われたくない」「キャリア形成に悪影響がある」等々、個々の価値観によるところも大きいです。
ですから、話したくない人は話さなくてよい、でも少しでも話して周囲に理解をしてもらいたいという人には話してもらえるよう、どちらでも選択できるような体制だとよいですよね。
個人の事情を言わなくてよい制度の場合は、社員皆それぞれがいろいろ抱えているという前提のもと、「個々を尊重してその事情を汲もう!」という”察する風土”の醸成も必要ではないかと思います。
2.制度導入後、利用者以外の方からの声はどのような声がありますか?
(ネガティブな反応があればそれに対する対応等もお聞きしたいです)
永森:私の知人(管理職)会社では、不妊治療を特別休暇枠で取得でき、理由は上長だけに伝えればいいんですね。実際部下が不妊治療を始めたようなのですが、外部からのマンパワーに頼らず、チームで保管し合う体制なので、人同士の関りが強い組織だそうなんです。
私自身、「頻繁に抜けたり、その理由を周囲が知らないという状況だと、周囲の猜疑心が高まり、困っている」という話を聞いたことはあります。知人の会社でも、「いつまでこの状況が続くのか。何やってるのかわからない人のフォローはしにくい」と実際部下から、不平・不満を言われたということでした。
個人の事情を言わなくてよい制度の場合は、ひとつ目の質問回答と重複しますが、"互いを察する風土"を意識した組織設計をされないとアンバランスになり、定着が難しくなるでしょうね。
「不妊治療をする」と公表したことによって、独身の女性社員にハラスメントを受けたという人もいます。女性の立場が細分化されている点も、仕事と不妊治療の両立支援の難しさのひとつの要素になっていると思います。要は、「こちらを立てればあちらが立たない」というような状況ですね。
今は特に、子育て中のママさん社員をサポートする傾向が社会全体にありますが、独身女性や子どものいない女性たちの不満もよく耳に入ってきます。
互いに助け合うという企業文化を育てるのであれば、誰かに偏ることがない、誰かにしわ寄せがいかない制度設計が必要だと思います。
誰かの仕事をサポートしたら、ポイントが加算されて、自分も何かメリットがあるような、サポートした分福利厚生が使えるなど、自分に返ってくるような“しくみ”。組織の中でも、マンパワーをうまく循環させられるような設計があるとよいなと思います。
3.制度だけで解決できない家庭の事情等(例えば病気だけではなく金銭的な面など)について、両立支援担当者として話は聞けても具体的な問題解決にならない事も多いです。
このような場合、社内では人事担当者が専門家に繋ぐハブ的な役割があると思うのですが、いかがでしょう。
永森:そうですね、不妊の悩みというのは、体のことのみならず、家族関係、人間関係、キャリア、お金、アイデンティティと多岐に亘りますので、オールマイティーに話を聴けるカウンセラーなどの専門家に繋ぎ、安心して話せる場を社員に提供することも、支援体制の大事な要素ですね。
私共の一般社団法人ライフキャリア妊活サポート・モリーブでは、ライフキャリアに関する相談室「ハナセルフ」というサービスをご提供しており、専門性をもって幅広い悩みや混乱をお伺いできるカウンセラー達が所属しています(https://hanaself.molivefor.com/)。
企業と提携して、社員の方が無料で自由に相談できるようなシステムです。適したリファー先のご紹介含め、個人の事情を汲みながら伴走させていただいていますが、社内組織とは別の「安全な相談場所」を社員に準備することも、本質的な体制づくりの一環になるでしょう。
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人生、常に安泰且つ安寧に過ごせるわけではありません。誰もが、いつ何時、想像もしていなかった状況に追い込まれる可能性があります。働きやすいということだけでなく、個々に事情を抱えたとしても働き続けられるように。企業のさまざまな制度や福利厚生を使いながら、日々を積み重ねていけるように。
今後、多くの企業が未来志向の経営戦略を立て、そんな安心感のある社会風土が醸成されることを願います。
代表
永森咲希





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